全ての人間は絶響MUSICAを見て音楽を愛せ

絶響MUSICA THE STAGEを見た。
絶響MUSICAとは脚本金春智子さん・キャラクターデザイン川村敏江さんという最強タッグで贈る、音楽を巡る星の物語。
更に今をときめく若手俳優やフレッシュな顔ぶれ、アニメの最前線で活躍する男性声優を起用し、多方面のメディアミックスが期待される作品なのだ。


https://www.musica-project.com/

HPはアニメ調のキャラクターデザインとキャッチーな音楽が可愛らしく、今後は舞台だけでなく二次元の展開もあるのかな、と思う。
そういう前書きはそこそこに、この舞台が本当にマジで良かった。
コロナ後初観劇、観劇出来るのも奇跡のような環境で、優しく温かい物語に涙した。
一言でまとめると「音楽で地球や他の星を救う話」なのだが、そのアニメチックな設定とは裏腹に非常に人物達の"個人の感情"に注視した静的な脚本だった。
6人の高校生と妖精が地球を救う話なのでもっとドラマチックで派手な演出などで攻めていく作品だと最初思っていたのですが、人物の吐露する音楽にまつわる気持ちや悪側の純粋な気持ち(すごく重要)はごく個人的なもので、「個人的な想いを重ね合うことで強くなれる」という優しいメッセージを感じた。
また、主人公側の6人の男の子達は音楽との距離感がそれぞれ違って
・死ぬほど音楽が好きだ
・音楽は好きだけどきっとそれ程じゃない
・音楽をこれ以上嫌いになりたくない
・音楽は好きだが絶望した事がある
・音楽はただ出来るだけだ
・音楽には1mmも興味がない
……となんと6人全員音楽への解釈が異なっていて、その認識を皆変える事はない。
だけどたったひとつ「困っている人を助けるのに理由は要らない」という人の善さは6人に共通していて、そんな6人が音楽を重ねると、何とも言えない優しさが会場中を包んでいた。
私はこの音楽への解釈が多種多様で誰も認識を変得る事はない、という点にとても感動した。同じ解釈を持っていなくても繋がれるのが音楽の強さで自由さだと言われているような気がしたからだ。
優しい気持ちになりたい人、幼なじみの男の子二人というキーワードにときめく人、純粋な悪が好きな人、金春智子作品、川村敏江作品が好きな人、音楽が好きな人……とりあえずHPを見て何となく「あ、良いかもな」と思うポイントがあったら予想の500倍くらい良いので是非BDで見てほしい。そして一緒に次回作を見よう!

 


この舞台はもともと4月に予定されていたけれど、コロナ禍で延期した後に6月下旬に7月上演が決定され、4月の公演で準備していたものはあれどかなり短い時間の製作・広報になってしまったのが非常に惜しまれる。
公演日〜1週間ほど生配信含めた配信を行なっているのですが、本当に見てほしいので長期的なディレイ配信やBDを誰でも買えるようになってほしいです(舞台作品の円盤、なんとなく現地で舞台行った人のものになりがち…!)
演出の末原さんもツイッターにて「決して幸運に恵まれていた公演ではなかった」というのと同時に「幸運な舞台だった」とも仰っていて。
それは観劇しながらこんな状況の中何とか舞台を届けようと「今できる精一杯の事をしよう」という気概が伝わってくるものだったからだとも思うし、アニメと舞台が混ざったような新しい感覚を届けようとする絶響MUSICAを作ろうと努力した人がこの舞台を幸運にしてくれたのだと思う。現に私はこの幸運を確かに受け取ったし、私や絶響MUSICAを楽しみに待っていたような人達が幸運を受け取った事で、この舞台を作り上げたすべての人が何らかの希望を持てていたら良いなと思った。
あと一緒の時間に観劇したフォロワーに「出演者の方は絶響MUSICAが何かわかってないと思うんですが…って言ってるけど、オタクたちは"脚本・金春智子、キャラクターデザイン・川村敏江、音楽で世界を救う話"という概要で大体"分かる"よね」と言われて本当それだな~~~と思って笑いました。そのイントロでマジで分かるんですよね……このイントロで分かる人は見て損はないと思う。
色々言ってしまったけど本当に次回作が楽しみなので、今はグッズが届くのが楽しみです!!!!!
欲を言うと7/20の15:50までなら千秋楽公演を見られるのでぜひ見てほしいです!!!!!!7/20までグッズも売ってるよ!!!!!

配信
https://eplus.jp/sf/detail/3294200001?P6=001&P1=0402&P59=1


グッズ
https://www.musica-project.com/goods/

 

以下個人的な感想です(息をするようにネタばれがあります)

 

 

 

 

今回はヒビキとミキが中心の話でしたが本当に良い話でしたね。瑞々しくてちょっと痛々しくて、最後は爽やかな青春が駆け抜けるような……(ポエミー)
才能に溢れ6人の中で唯一「音楽」を疑う事なく愛しているヒビキと、音楽は好きだがヒビキの隣にいる事で「自分は音楽をそこまで好きな訳じゃない、だからヒビキを応援しよう」と一歩引いた視点を決め込んだミキ。
ヒビキのリュックを持ってあげたり、何気ないやりとりでミキがヒビキに対してどれだけ尽くしているかを感じる事が出来てしまい既にめちゃくちゃにしんどい。
だって同い年の高校生でこんなやりとりをする幼馴染、居る?もっと幼馴染ってこう、家族みたいな……いやヒビキとミキは弟と兄っぽいんですけど、ミキがめちゃくちゃヒビキを立てようとする。ミキの「ヒビキの夢を叶えよう」という覚悟が伝わって来る。優しいしんどさが序盤から襲う。
ヒビキは今回本来の明るさを出せずふさぎ込んでいるというシチュエーションなので演じる側としては「最初からほぼ最後まで本来の性格を出せない」という凄く難しい役だと思うんですが、主演の黒田さん(これが初舞台らしい。マジで大変だったと思うんですが本当にすごい)は本来明るさを持ってるけど声が出ない事で本来の性格もうまく出せない…という難しい部分を表現していたと思います。
ヒビキの「声が出ない」に対して喉に声と言葉が張り付いて離れないみたいな、掠れた音だけが出るんですけど。凄い焼けるような音だなって…状況に対して正しい痛々しさで本当見てて気が気じゃなかったです…演技ってすごい!
終盤においてミキが「自分なんかじゃ選ばれない。ヒビキの隣に立ってはいけない」という気持ちから、ソノーのルチェによって「君じゃなきゃダメなんだ」と言われてムジカの力を「ヒビキと一緒に歌う為に使う」というミキの選択に本当に泣きました(マスクはべちゃべちゃになった)
隣に立ちたいというのがミキの本当の願いで、それはヒビキを立てる事じゃなくて一緒に歌う事だったのだなあと思うし、その前にヒビキに言われた「何も考えないで歌えば良いだろ」という言葉でもしかしてヒビキも本当はそれを望んでいたんじゃないかな…などと感じました。この何も考えないで歌えば良いってヒビキには出来てもミキには出来ない事だったと思うんですが、言い方を変えればそれは「一緒に歌おう」だったのかな、とも。
そしてヒビキがミキのムジカを見て「きっと自分のなかにもムジカの力がある」と確信できるのが良かった。そうさ二人歌ったらなんでもできる……。

 

この瞬間のヒビキ以外の時が止まっている→スローモーションになる演出もレトロなんですけどいかにも舞台を感じる良い演出だった。絶響MUSICA THE STAGEはアニメチックな設定ながらそういうレトロで舞台らしい演出を見られるので、凄い「両者の好い部分を融合」みたいな感覚を味わえるんですよね……。声だけの出演で存在感がばっちりあるソノー達も凄く良くて。でも最新の技術がガンガン取り入れられてるわけでもなく……。こんな状況だからかもですが「今出来る事を精一杯やろう」という前向きな気持ちを凄く感じる舞台になっていると思う。

アニメ(のような設定)・若手俳優による舞台上で感じる演技・声優の声のみの演技という3本の柱があって、それを融合した時にどういう表現が出来るだろうという点でどの柱も軽んじる事なく3つそれぞれの良さが上手く混ざり合っていたと思う。だからこんなに優しい舞台なんだろう。

 

ムジカを持つ他4人も気持ちいいキャラクターで「どんな子なんだろう」「もっと知りたい」という気持ちにさせてくれるキャラクターで、アニメの1話を見ているみたいにわくわくしました。したよね!?めっちゃした!(オタクたちへの問いかけ)


シンイチロウはこの中で唯一「音楽に全く興味のない人」。だけど天性のリズム感とバディのシエンの話をしっかりと聞いて一番ムジカの力を同調させている。もとから音楽やってる人からすれば心憎い人物像だけど、調子乗りで明朗快活なのでどこか憎めないかわいらしさもあって…。
私はHPでシンイチロウ可愛いなと思っていたのですが本当に可愛い。大胸筋動くんだぜ!とおもむろにミキの手を胸に突っ込む所、本当に可愛い。シンイチロウはバトルシーンでも縦横無尽に駆け回ってて想像した通りで見てて大満足でした。意外と他キャラクターとのつながりも多くて(トウヤくんと一年同士・クストーと色が同じで思い切り喧嘩が出来そう・意外と気が合う伊織先輩)、今後が本当に楽しみ。

 

シャルル先輩は才能に溢れていたけど技巧ばかりを重視するレッスンに耐え兼ね「音楽をこれ以上嫌いになりたくない」という理由で音楽から離れた人。セリフから察するに音楽に生きる両親への愛情も音楽と一緒に遠ざけてしまっているように感じる。でもルミノに出会って音楽で彼らの星を救う事を快諾してくれる良い人なんですよ。今回はヒビキとミキ以外の4人で一緒に行動する事が多かったけれど、その中で周りを嗜める役回りが多かった気がします。凄い良い人なんですよ。
この手のキャラクターって二次元だとちょっとナルシストとかそういう雰囲気にされがちな気がしますが全然そんな事なくて、HPのキャラクター紹介の「いつも笑顔でふわふわしている」に一切の嘘が無い。演じた平賀さんも日本人…というか人間離れした美しい顔立ちとギャップのある柔らかい演技でシャルル先輩のそういうギャップをギンギンに感じてしまった。
彼の音楽にまつわる愛憎を描かれるのが実は凄く楽しみ。「音楽は出来るつもりだったけど全く歯が立たなかった」と悔やむあたり、結構傷付きやすいタイプなのかな、とも……。傷付かないで笑顔でいてくれ……。

 

トウヤくんは舞台観て一番良いなと思った人物で、今の所舞台という枠組みで見て一番好きなキャラクターです。というのも演じている前嶋さんの演技がめちゃくちゃ好みで、たとえキャラクターがいつも自分の好きになるタイプじゃなくても、演技によって好きになれたりするのは本当に舞台作品の素晴らしい部分だと思います。
トウヤくんは可愛い見た目の割に喋り方が凄く冷たくてちょっと早口で説明的。そして結構下を向きがちな演技をしていた。でもクストーとストラの退却後、「見つけた、楽しいって思える事」の瞬間でやっと顔が上を向いて、晴れやかな顔をするんですね。
音楽も含め「何でも出来るって決して素晴らしい事じゃない」と言っていたトウヤくんがやっと彼が素晴らしいと思える事を見つけて顔を上げた瞬間が、凄くドラマチックで泣いてしまった。何なら今も泣きながら感想を打っている。ヴァイオリンをいつも大事そうに、ちょっと重たそうに持っているトウヤくん。きっとラビーの事も大事に思っているんだろうな。

 

伊織先輩も舞台という枠組みで演じる人の影響があってだと思うんですがキャラクター的にも舞台における役割など含めて凄くどっしりした3年生感のある人だった。
「実家での古典芸能を通して音楽は好きだけど後を継げない為絶望した事があって、今は自分の音楽を探している」という中で彼が持つのが古典芸能とはあまり関係ないように思えるエレキベース。そしてライブパートではラップを披露するシーンが多くソロ曲はソフトなロックやJ-POPに近いニュアンスの曲で、彼だけで何種類音楽持ってるの?という気持ちになる。きっと沢山の音楽に既に触れていてベースに行きついたのだろうし、もしかしたらまだ探してる最中なのかもしれないな、とも思う。
あとこれは演じている樋口さんの部分だと思うんですがライブパート等で他の人にちょっかいをかけたり背中を押したりしていてそれが伊織先輩と樋口さんの「良い先輩感」をめちゃくちゃ醸していてエモかった。面白い部分も担っていたし、このキャラ性でその役割も出来るのはすごいなあと単純に感心する。
クストーとストラが襲来してからの「シンイチロウ!!」「オウッ!!」これ一言で一見バラバラで喧嘩腰だった二人が似たもの同士で一緒に戦えるという事を表していて本当に凄い。

 

あと個人的に楽しみにしていた(キャストで唯一知っている人がいた)悪役側も本当に凄くて。
舞台に立っているのは実質二人なのでより力強さとか説得力とか必要だと思うんですが全然心配してはなかったけど本当に心配する必要は一切無かったですね!!そしてちゃんと3人で悪役だったのが嬉しかったです。舞台上に立っているクストーとストラがまっすぐにモーヴェ様を信仰していたからだと思います。ありがとうございます……。


クストーは動くシーンも多くて大変だったと思うんですがVSシンイチロウでは攻撃だけじゃなく被ダメージもリズムに合わせて受けててこれが絶響MUSICA!!!!って感じですし、クストーのダンスは体幹もよくて緩急が凄い。踊れる人のダンスなんですよね(太田さんだからそれはそうだろって感じなんですが)
私は太田さんの悪役を初めて見ましたが見事にハマってて嬉しかったです。
個人的には「ストラと一緒にモーヴェ様の話をしている内に崇高さ感じて段々元気になっていくクストー」が本当に素直でいい子だな…と思いました。

推しの話をしてると元気になるよね……分かる~(そうじゃない)

 

ストラは動なクストーに対して静で色気のある役柄で、でもモーヴェ様への忠誠心が少ないセリフからも表れていてめっちゃ好きですね。
特に好きなのが「ここは二人で行きましょう」とクストーに提案するシーンなのですが、これを1話にあたるこの公演で提案出来る協調性のある悪役はストラだけですね。
モーヴェ様の理想を叶える事を第一に考え協力し、全力で任務を遂行しようとするの本当に愛おしい。クストーに比べてちょっと中性的な見た目もあってこの二人が並ぶだけで本当にバランスが良いです。3人がそろった時が楽しみだなあ。

 

モーヴェ様は実は凄く楽しみにしていたキャラクターで、映像出演と発表されたとき少しショックだったのですが、実際見てみると画面越しとか関係ない存在感で。
個人的な話だと輝馬さんの出演している公演は2016年くらいまで数度見た事があって、特にその中だと幕末Rockが好きなのでこの作品とテンションも近いだろうと思って絶響MUSICAを見る前にBDを見直したんですね。土方さん懐かしいな~という気持ちを抱えて絶響MUSICAを見に行ったらめちゃくちゃ歌上手くなってて泣きました。舞台観たりみなかったりしてるとこういう事もあるよな。
モーヴェ様の表の言い分がどことなくキリスト教っぽいのも本当に好きですしクストーとストラがモーヴェ様を心から信仰しているのも素敵ですよね。そして歌声によって絶妙な宗教っぽさや彼らの信仰心に説得力が生まれているのは本当に素晴らしい事です。是非3人が並んだ所が見たいです。本当に。
あと金春さんがツイッター
「クストーとストラには明かされていないしんどい過去がある」と仰ってたので何…????って感じです。早く聞かせてくれ。なるべく早くそして一番いい時期に次回公演やろう。


何だこの不穏かつ楽しみのすごいツイートは


あとヒビキのお母さん、本当に可愛い。寺山さんはくにおくんぶりに見たんですがヤンキーの印象から料理上手な可愛いママに印象がすっかり切り替わってしまった。
ゲスト(金と銀の読み手)に振り回されるお母さんも可愛かった。次回も可愛いお母さん見たいです。
金と銀の読み手は仮面ライダージオウのウォズみたいな立ち位置でごく個人的に凄く興奮しました。公演ごとにゲストなのでちょっとした個性があるのも面白かったです。

 

そしてライブパート。
私は長い間舞台におけるレビューという時間に疑問を持っていたのですが、絶響MUSICAのライブパートは「各キャラクターの掘り下げを感じられる貴重な機会」という事が分かり、レビューやライブパートにはこういう意味もあるのだなあ、と凄くライブパートの意義を感じられた。なので私にとって凄く大きいものでした。これからのレビューの見方も変われるんじゃないかな。
面白いのは各ソロ曲で他のメンバーが見られたりする事なんですが、それが本編では見られなかった皆の距離感を感じたりできるのですが、その点で個人的にたまげたのは
ミキのソロ曲でクマノスケにキスしてたヒビキ
シンイチロウのソロ曲ではしゃぐシャルル先輩とトウヤくん、そして自由にふるまいつつシンイチロウの手を取る伊織先輩です。
特にミキのソロは初めて見た時、これが幼馴染を取り巻く距離感……!!?と精神的に椅子から転げ落ちました。君らめっちゃ浮世離れしてるじゃん。どうかそのままでいてね……(7/9昼の公演は少なくともそうだったけど他公演はどうだったのだろう……)
アニメ作品だとある程度人数を絞ってコンビで推すというのは一般的な手法だと思うんですが、ヒビキとミキは誰から見ても…という感じだけど、本編でもちょっと描かれてたシンイチロウと伊織先輩、シャルル先輩とトウヤくんというコンビに意外性がありつつもライブパートでそれが強固になったのは嬉しい。
あとは個人的にはトウヤくんがお気に入りのキャラなのでnew bowのかっこよさと可愛さと技巧でこちらをボコボコに殴ってくる感じでダメージが凄かったですね。良さで人はボコボコに出来ます。
そして多分全人類が「クストーダンス上手ッ……」になったと思います。私はなりました。ダンスとダンスの間の何気ない煽りの動作などが本当に上手い。上手いしか言ってなくて申し訳ないんですけど。

あとクストーストラのデュエット曲Warriors of Justiceでクストーとストラを合わせると頭文字Dになった事が分かってめちゃくちゃ好きですね。
ソロ曲には基本的にダンサーさんが付くんですが、本編でも敵味方のない音楽の空気そのものを表現されてて。ライブパートでも空気を彩る為にキレッキレのダンスが見られたのが凄くうれしかったです。ライブにおいて空気ってすごく大事ですよね。今回どうしても観客側は制限がかかっていたので、ダンサーさんが居て画面が華やかになって安心しました。


次回はモーヴェ様と謎の声のデュエットが見たいなあ。モーヴェ様に限らずですがバディとのデュエットは本当に見たいので実現してほしい。